ワインのお話 -「オスピス・ド・ボーヌ」ワインのお話 –

タイタンの金澤幸雄です。

秋も深まり、そろそろ本格的な冬の足音が聞こえてくるようになると、「オスピス・ド・ボーヌ」のワインオークションの季節がやってきたなと思います。

毎年11月の第3日曜日に開催される「世界でもっとも有名なワイン競売会」と言われるこのオークションは、今年で162回目を迎える歴史と伝統のあるチャリティ・オークションです。

オスピス・ド・ボーヌとは、もともとは、ブルゴーニュ公国の宰相だったニコラ・ロラン(Nicolas Rolin)と、その夫人ギゴーヌ・ド・サラン(Guigone de Salins)が、1443年にブルゴーニュの中心都市ボーヌに私財を投じて設立した慈善病院でした。

当時、百年戦争が終結したばかりのフランスは戦後の混乱を極めていました。その上「黒死病」と呼ばれる、市民からたいへん恐れられていたペスト菌による感染症が猛威を振るっていたのです。

そんな中、ロランは満足な医療が受けられない恵まれない人々に、自身が所有するブドウ畑で取れたブドウで造るワインを販売して利益を得ることで無償で医療を提供し、オスピス・ド・ボーヌを運営しました。

すると次第に、そんな夫妻の献身的な姿に共感したブルゴーニュの貴族や地主たちから、彼らの所有するブドウ畑が寄進されるようになりました。現在、その面積は60ヘクタールの広さにもなっています。

そうして1971年まで運営されていたオスピス・ド・ボーヌは現在、病院としての機能は別の施設に移り、建物は博物館としてボーヌ随一の観光名所になっています。

そんなオスピス・ド・ボーヌで、さらなる資金捻出のために新ヴィンテージのワインが初めてオークション形式で販売されたのは1859年のことです。冒頭にも書いたとおり、このオークションは現在では11月の第3日曜日に開催され(2022年は11月20日)、その前日2日間を合わせて「栄光の3日間」と呼ばれるブルゴーニュでもっとも大きな規模を誇るワイン・フェスティバルが開かれるのです。

オスピス・ド・ボーヌのオークションがワイン関係者から注目を集める最大の理由が、所有する60ヘクタールの畑の約90%が、グランクリュ(特級畑)とプルミエクリュ(一級畑)に格付けされているという点です。そういったことから、オークション当日は世界各国のネゴシアン(卸売業者)とバイヤーが一堂に会し、落札価格はその年のブルゴーニュワインの取引価格に大きな影響を与えるほか、世界中のワインマーケットの動向を占うバロメーターとなっているといわれています。

現在はイギリスの世界的オークションハウスであるクリスティーズが競売会の運営を任されています。ワインの落札価格はチャリティということもり、一般的なワインの相場より高めな印象です。

金澤幸雄

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