ワインのお話 -シャトー・ル・パン

金澤幸雄です。

それまでは広く知られているわけではなかったものの、ある日メディアやコンテストなどで注目されたり、著名人が買いつけたりしたことがきっかけで価値が上がり、1本数十万円以上という高額で取引されるようになったワインを「シンデレラワイン」と呼びます

その元祖にして代表格とも言えるのが、ボルドーにあるドルドーニュ川の右岸に位置するポムロール地区の赤ワイン「シャトー・ペトリュス」です。

シャトー・ペトリュスは、1889年のパリ万博で金賞を受賞後、マリー・ルイーズ・ルバがシャトーを買い取ってオーナーとなりました。

彼女の「品質向上を第一とする」「決して安売りしない」等の経営方針が功を奏し、シャトー・ペトリュスはわずか数十年の間にボルドー左岸のメドック地区にあるフランス5大シャトー(シャトー・ラトゥール、シャトー・ラフィット・ロスチャイルド、シャトー・ムートン・ロスチャイルド、シャトー・マルゴー、シャトー・オー・ブリオン)に並ぶ、あるいはそれ以上の価値をもつワインとなったのです。

そして、そのペトリュスに勝るとも劣らない人気を誇るのが、これからお話しする「シャトー・ル・パン」です

シャトー・ル・パンは、ファースト・ヴィンテージが1979年という、ワインの世界ではかなり歴史の浅い部類に入るワインです。

1979年にジャック・ティエンポンがこの畑とメゾンを購入し、ワイナリーの近くにぽつんと立っていた1本の松にちなみ「Le Pin(松の木)」と名付けました。

当時のシャトー・ル・パンの畑はワインづくりに最良の状態ではなく、また資金も限られていたため、簡素な設備からしかワインづくりを始めることはできませんでした。

しかし、1982年のヴィンテージが、「神の舌を持つ男」の異名を持つロバート・パーカーが手掛けるワイン専門誌「ワイン・アドヴォケイト」で、パーカー・ポイントと呼ばれる採点方法で100点満点を獲得したのです。

シャトー・ル・パンの評価は瞬く間に上昇、ワイン・アドヴォケイトもシャトー・ル・パンのクオリティの高さにいち早く気づいたことで、大きな信頼が寄せられるようになりました。

こうしてシャトー・ル・パンの人気は一気にブレイクし、シャトー・ペトリュスをしのぐワインとしてワイン通の間で広く知られることとなったのです。

しかし残念なことに、シャトー・ル・パンはその希少性から偽物も多く出回っているのが現状です。かなり信頼できるルートからでないと、本物のシャトー・ル・パンを入手することは不可能だといわれています。
シャトー・ル・パンのように高額でレアなワインは投資の対象になり得ますから、普段から見極める目を養っておくことが重要です。

金澤幸雄

Photo by Pierre Ducher on Unsplash