
金澤幸雄です。
「金澤さん、僕は当たり前のことを当たり前にしていただけなんだけどね」。
これは、とある業界で大成功している人生の先輩、Aさんの言葉です。
Aさんは昔、自分の下に配属された新人に手厚い指導をし、その業務の基礎やクライアント対応のノウハウなど、自分が培ってきたあらゆるスキルを細かく教えたのだそうです。
「自分が若造の頃、当時の上司がとても丁寧に指導してくれたことが今の自分の成功につながっている。その上司の年代にさしかかった者として、当たり前のことをしただけ」とAさんは振り返って謙遜していましたが、そのおかげで新人は順調に成長し、数年後には重要なプロジェクトを任されるまでになりました。
そんな中、Aさんは全く新しい業務を行う部署に異動することになりました。慣れない業務に手こずっていると、かつて自分が一生懸命育てたあの新人が、同僚に声を掛けたり休日を返上したりしてまで、Aさんに役立つ情報や人脈などを惜しげもなく紹介してくれたのだそうです。その結果、Aさんは新しい部署での業務においても目覚ましい成果を上げることができたのだそうです。
「新人に仕事を教えていた当時は、まさか見返りなど全く期待していなかった。ただ、先輩からこんな風に指導されたら嬉しいだろうな、という気持ちを常に持って接していた。昔の恩をこういう形で返してくれるとは思わなかった。あの時の新人の働きには本当に感謝している」とAさんは言います。仕事上で受けた恩を忘れずに返すことはもちろんすばらしいことですが、私はAさんの感謝の心を忘れない姿勢こそが結果となっているのだと実感しました。
どんな業界においても、効率や利益が重視されるのは当然です。しかし一方では、「恩」を大切にすることが、長期的な成功につながる重要な要素となります。仕事上だけの付き合いであっても、人とつながっていく中で受けた気遣いや優しさに常に感謝を忘れず、折を見てその恩で返していくことは、間違いなく信頼関係の構築につながります。信頼はある日突然に築けるものではなく、ましてやお金で買えるものでももちろんなく、こつこつと積み重ねた小さな心遣いの積み重ねによって初めて生まれるものなのです。
私もビジネスを始めて長く経ちますが、目先の利益を気にすることはまずありませんでした。そういった、利益よりも恩を大切にする文化は、組織全体にも良い影響を与えるように思います。組織のメンバー同士が互いに感謝し合い、恩返しや恩送りを自然な行動として行えるようになることで、職場の雰囲気やチームワークも目に見えて向上します。感謝の気持ちが伝わる環境では、皆のモチベーションが高まり、結果として生産性の向上にもつながるのです。
人を大切にすることは恩を大切にすること。それが意識せずできるようになれば、短期的な利益を追うだけでは得られない、長期的に持続可能な人間関係の礎となると確信しています。
金澤幸雄
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