
金澤幸雄です。
ワインは大好きで日常的に飲んでいますが、ワインのお話をしばらく書かないでいたら、最近、世界におけるワインシーンが多様性に満ちた興味深い展開を見せているようで、この機会に少し触れてみたいと思います。
近年、世界的に注目されているサステナブル(持続可能性)という波がワインにも訪れ、取り組みが積極的に行われていますね。ここ最近の急激な気候変動が深刻化する中で、ワインを造るためのブドウ畑の管理方法、醸造プロセス、パッケージングに至る全ての工程において、良い環境を未来へとつなげていくための配慮が求められています。
何年か前にブログでご説明した「ビオワイン」や「ビオディナミ農法(月の満ち欠けなどをワイン造りに反映させる)」などは、ワイン愛好家の中ではすでに知っていて当然の知識ですが、2024年あたりから「リジェネラティブ農業」、つまり、ワイン造りに向かない土壌を再生・回復させるという環境再生型農法で造られたワインが注目されています。この前ワイン雑誌を見ていたら、カリフォルニアのナパではこの農法をいち早く導入するワイナリーが増えており、その流れは今や世界中に広がりつつあるようです。日本でも、東日本大震災の津波で大きな被害を受けた宮城県石巻市の中学校跡地にこのリジェネラティブ農法でワイン農園を作り、2030年の出荷を目指してワイン造りに励んでいるという希望にあふれた話題もあり、サステナブルやリジェネラティブについては個人的に思い入れもあるので、販売されたらすぐに試してみたいと思います。
また、オレンジワイン(白ブドウを皮や種ごと用いて造るワイン)やペットナット(酵母を除去しない微発泡ワイン)も引き続き若者世代を中心に人気を集めています。特にオレンジワインはポップなイラストを用いたエチケットの、いわゆる「SNS映え」するものが多い上、今まで注目されてこなかった温かみのある液色が新鮮なのでしょう。先日、たまたま入ったごくカジュアルなレストランで、隣の若い女性グループが何にでもオレンジワインを合わせているのを見て微笑ましい気持ちになりました。オレンジワインは使うブドウこそ白ですが、製法は赤ワインと同様なので、基本的には赤ワインに合うとされる重めの料理と相性が良いと思います。オレンジワインの爆発的な人気により、若者たちにとってワインが堅苦しいものではなく、気軽に楽しめる上に「イケている自分」を演出できるツールになりつつあるのを肌感覚で感じています。
私が数年前から個人的に勉強しているのは「シングルヴィンヤード(その区画で採れたブドウのみで造られたワイン)」です。
シングルヴィンヤードと言えばテロワール、テロワールと言えば緻密に細分化されたブルゴーニュのクリマが有名ですが、シングルヴィンヤードは一般的にはヨーロッパ以外のものを指すことが多く、例えばナパのごく小さな区画の希少性の高いワインをシングルヴィンヤードと呼びます。
ワインにしても音楽にしても、そこに何らかの物語性と言いますか、「ならでは感」があると魅力がぐっと増しませんか?そんなシングルヴィンヤードのグラスを傾けると、遠いブドウ畑で実るひと房のブドウが目に浮かぶような気がするのです。
金澤幸雄