
金澤幸雄です。
忘れられない旅の話をします。
先日、海外に住む実業家の友人と彼のプライベートジェットで欧州に10日間の旅行に行きました。彼は経営者としても超一流ですが、世界最高峰のワインコレクターとしても知られ、世界中のワイン生産者から特別な一本を「あなたにならお譲りできる」と託されるような人です。
彼とは、私の家とアートコレクションがきっかけで出会いました。彼はアートにも造詣が深く、懇意にしているアートディーラー経由で私のコレクションを知ったようで「ぜひ実物を見てみたい」と申し出てくれたのです。あらゆる名品を鑑賞し、豊富な知識と確かな審美眼を持つ彼が、私のコレクションに興味を示してくれたことはとても光栄でした。
私のコレクションを前にした彼は、こちらがちょっと気圧されるくらい真剣なまなざしで作品を見つめ、アーティストが作品に込めた意図を丁寧に読み取り、感想を伝えてくれました。それは私が頭の中に描いていた解釈と驚くほど似ており、アートの捉え方や感性がこんなにも共鳴する相手は久しぶりで、二人でアートに触れている時間が、自然に友人としての付き合いへとつながっていきました。
ワイングラスを傾けながら(彼も私も決してガブガブ飲むタイプではありません。香りや味を確かめるために少しだけ嗜み、あとは他の友人たちに振舞ってしまいます)、彼はざっくばらんに近々発表する新しいプロジェクトやワイン、アートやレストランについての話をしてくれました。そのどれもがワクワクするような驚きに満ちていて、聞いているだけで同じ経験をさせてもらっているような感動がありました。
しかし、何より私の心を動かしたのは、彼の周りの人達への気遣いです。
彼はホストとして、私を含め招待した友人はもちろん、店員やソムリエ、彼との食事に係わる全ての方への気遣いをします。友人をもてなすために最高級のワインやシャンパンを持参し、店員には多額のチップを渡し、ソムリエには最高級ワインをいくつもテイスティングさせてあげ、店内の会計はすべて彼が支払いました。ここは私が支払うという話もしましたが、彼は「私がホストなので私が支払います。お気持ちだけ有難くいただきます」と固辞されました。とにかく周りの人たちが心地よく、そして楽しく時間を過ごすことに神経を集中させていました。
その言動を見た私は、思わず胸がいっぱいになりました。
手前味噌ではありますが、私も気遣いができると自負をしています。しかし、彼の気遣いと比較すると足元にも及びません。
寝る間も惜しんで働き、起業家、またアートコレクターとして「アジアの巨人」と言われるほどの地位や名誉を手にしても、決してそれらを鼻にかけることなく、常に周囲への細やかな気遣いを忘れない彼の言動には、いつものことながら深い敬意を抱かずにはいられません。
肩書きや成功はその人の人となりを表面的に伝えることはできますが、本当の姿までも表せるものではないのだと、彼を見て改めて気づかされました。人間の真の価値というのは、彼が示してくれたように、どんな立場であっても、どんな人に対しても、どれだけ丁寧に向き合えるか、なのだと。家族、友人、スタッフ、誰に対しても分け隔てなく心を尽くし、その場にいるすべての人が楽しいひと時を過ごせるように心を尽くす彼のふるまいは、まさに人としてもっとも高貴な「格」だと感じ入りました。

彼は、旅行後にすぐ家族と共にニセコへ向かいました。しかし、まったく慌ただしさを感じさせず、むしろ限られた時間をゆったりと楽しんでいるように見えました。そんな彼が「あなたに」会いに来た、と言ってくれたことの意味、私が彼に選ばれ、また私も彼を選んだという事実が、素直にうれしく、そして確かな自信を与えてくれました。
何をして過ごすかより、誰と過ごすかを第一に考える。そんな生き方が、人生を豊かにしてくれるのだと実感した旅行でした。
美味しいワインや料理は一人ではなく、愛する友人と楽しむものとも学びました。
彼が「アジアの巨人」と言われるだけはある方でした。この素晴らしいパートナーと巡り合ったことで、ビジネスだけではなく、人柄・見識も含め、今後も多くのことを学んでいくと思います。
金澤幸雄
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